記事一覧

No.3330 遺族の慟哭いかばかりか

2020.10.09

 昨年4月に池袋で発生した高齢者による暴走事故は、31歳の主婦とその長女3歳の命を奪った。他にも9人が重軽傷の被害者となっている。高齢者の運転では、高速道路の逆走といった方向性や平衡感覚の衰えに関係するモノもあるが、アクセルとブレーキの踏み違いという運転感覚麻痺によるものが圧倒的に多いようだ。
 先の事故では、事故当時88歳だった元通産相技術院院長の飯塚幸三被告が、自動車運転死傷行為処罰法違反に問われ裁判になっていたが、その初公判が8日東京地裁で開廷した。
 高齢者かつ社会的地位も高いものがあった被告ゆえ、高潔清廉に自己責任及び法に則った対応をするものと思っていたが、事実はまったく逆の、驚くべき証言を口にした。
「車に異常が起きて暴走したと思う」
 にわかには信じ難い、第三者の想いとかなり乖離した内容である。弁護団による弁護手法とは思うが、正に車に原因を転嫁した「嘘」だとしたら、亡くなった方が報われないとはこういうことを言うのではないだろうか。事故の当事車両であるプリウスを生産しているトヨタも驚いたことだろう。この証言に無関心ではいられないはずで、何らかのアクションを起こす必要が生じたのではないだろうか。同時期に生産された車両のリコールも・・・いや、それはこの裁判の片棒をかつぐことにもなるので有り得ないか?

 私は議会において、高齢者の運転は年々社会的恐怖の対象となっており、免許返納者も増加傾向にあることから、返納が高まることに関係することとして、そうした方々の生活の足として公共交通の充実を説いている。
 この裁判、被告の証言も重なって決心まで数年かかる可能性が高い。それまで被告自身が存命しているかどうかも危ういこともあるし、それまで不通に一般生活をおくることになる。つまり、被告はほとんど償うことに関わらずという可能性もある。遺族にとってこれほど無常なことはあるまい。