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No.3565 選挙は民主主義の根幹か?

2022.05.17

 全体主義、独裁政権の国家が国際情勢のゆがみの原点をもたらしている。反面、資本主義の現状も問題視する評論が少なくない。
 前者は、言うまでもなく自国権益のために核武装及び威嚇をし、領土侵略、民族弾圧・虐待・拷問といった非人道的行為などをいとわない国。また、国の都合で情報統制や言論弾圧を国家ルールとして示す国。
 後者は、おおらかな自由を推進するが、自由な競争社会が貧富の差を生んでいることが社会の平等性をないがしろにしていると評される国。
 どちらの国民でいたいかと言えば、結論は言わずもがなであろう。

 しかし、今がどうあれ選挙によって国の体質が変わってしまうことがある。特に、大統領制という国民投票制の元では、国民主権で無くなる国体変化がもたらされることもある。
 先日のフィリピン大統領選挙がそうではないだろうか。強権独裁政治の権化とも言われたマルコス大統領の息子候補が圧倒的な差で勝利を得た。候補者演説会も拒否し、ネットでの若者票の取り込みに焦点を定めた選挙戦。
 故マルコス大統領は、やりたい放題の贅沢奢多な実態が明らかになって、放逐、財産没収となったが、事実は全財産の35%程度の没収で、いまだ1兆円近い未没収財産があると言われている。
 今回、息子候補はインフラ整備を主体に治安と経済の改善を訴えたようだが、インフラ整備が遅れた原因には先代の政治手法の問題もあったはずである。しかし、今回の選挙で国民は圧倒的に世襲候補を支持した。
 原因は、若い人は過去に国を揺るがした事件や問題を知らないということと、たとえ知らされたとしても現社会への不満が先に立ち、劇場型選挙の雰囲気にのまれる形で候補者選択をする傾向がある様に思う。こうした選挙結果から国民置き去りのファミリー奢多政治が現実となった場合のことを思うと、選挙が民主主義の最たる制度だと言い切れるかどうか悩ましい。


 新大統領となるマルコス家は、不正蓄財、学歴詐称などの問題点が指摘されている。捜査機関への直接的な影響をもたらす可能性も考えられる。92歳になるイメルダ夫人はこうした関連でいまだに係争中。肝心の新大統領は、オクスフォード大卒とか米MBA取得といった事実はないという。となると、司法・捜査機関に直接介入する可能性もある。
 そういったことは問題外で大量得票を獲得した新大統領だが、国民の信任を増す政治を実現できるのか、それとも良くも悪くも先代政治を承継するのか興味深い。先代政治は国を発展させたと称していることから、どうも同じ方向で国を仕切る大統領になりそうではある。副大統領は、前大統領ドゥテルテ氏の長女が当選した。
 果たして国民の選択が正しかったのかどうかが判明するのにさほど時間はかからないかもしれない。日本にとってのフィリピンを考える時、それは中国外交をどのように構築していくか、自由で開かれた南シナ海の維持にどう対応するのか。実利を重視した中国外交では海洋権益という面で不安を生じることになることは間違いない。

No.3563 惜しまれる死

2022.05.10

 このところ、深夜から朝方にかけて春をどこぞに忘れてきたかのようだ。冷え込むという表現まではいかないものの異様に寒い。7時過ぎに外出するので、アンダーシャツを長袖に、その上からシャツ、ジャージと重ね着するほど。ところが、その後時間の経過とともに徐々に変節する陽気に体調管理も容易ではない。外は暖かいが家の中はなんとなく冷えており、暖房をかけたくなるほどだ。
 体調管理には、着たり脱いだりを面倒がるのは要注意だということを、昨今の陽気は教えているよう。なかなか冬物をしまえない日が続く。

 そんな陽気のせいかどうか・・・国際政治学者の中山俊宏さんがくも膜下出血で急逝された。先月末、いわゆる数日前にプライムニュースでウクライナ有事に関連する国際情勢を語る姿に接していたのでこの訃報には正直驚いた。まだ55歳という若さで、今後の活躍が期待される方ではなかったかと確信していたので尚更である。論理思考や論調ぶりが、尊敬の念を持つほど好感度の高い方だった。冗長にあらず、わかりやすくポイントを指摘する語り口調は、切れるというかシャープな感覚を聴く者に与える論者だった。
 言わずもがなのわかりきったもしくは何を言うかが事前にわかるようなキャスターやジャーナリストが多い中、中山さんの発信する内容は常に新鮮なものだった。ワシントンポスト系の記者上がりということもあって、アメリカ政治に精通していたこともあってか、大学教授のみならず日本政府にも重用された方でもあった。
 中山さんは、私の記憶では一昨年の大統領選挙の頃からメディアに登場するようになったと思うが、新鮮で知見にあふれた方だという印象を与えてくれるのに時間はかからなかった。
 私も人前で話すことが少なくないが、語りに関する大切なこととして、内容以外にも、スピード、トーン、顔つきに至るまで参考にするべき人だと感じていた。もちろん、出来る出来ないは別の問題で、学ぶべきは学ぶという姿勢はいくつになっても必要だという意識である。世の中、反面教師も良面教師も常時学びの対象なのだ。
 謹んで氏のご冥福をお祈り申し上げます!

No.3559 目には春爛漫でも・・・

2022.04.23

 気温の上下差は身体にこたえるが、日々目に入る街風景は春の情景を増している。
 家々の植栽のツツジがそれぞれ色合いを整えながら面積を増やす変化を見て、命の不思議を再認識したり、知人に教わった小さな鉢に観賞用菊の挿し木作業をし、その10㎝ほどの姿が元気にしているかどうかを朝な夕なに気にしたりと、時間の合間をぬって春を楽しんでいいる。
 とは言いつつも、なぜか心が晴れない。コロナのせいもあるのだろうが、やはりウクライナのことが思考の多くを占めているからだと思う。頭に破片を受けて命を取り留めた13歳の少女をみたが、これが氷山の一角かと思うといたたまれない気持ちになる。マリウポリの製鉄所地下に閉じこもった民間人は、ここをハエ一匹通れないように封鎖しろというプーチンの命令通りになったとすると、今や閉じ込められているということになるが・・・。

 ウクライナの春は遠い! いや、夏さえも。 このままいけばイタリア映画「ひまわり」で観た画面いっぱいにひまわりが咲き誇った風景は白昼夢で終わるやもしれない。この映画自体は、戦争が生む悲恋をウクライナの情景に結びつけ、ヘンリーマンシーニの音楽と相まって叙情的に観る者を魅了した映画だった。「昨日・今日・明日」の風刺コメディでコンビを組んだソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニの名演は若かった私にも記憶に残る映画だった。余談だが、この頃は仏伊の映画や音楽が世界中でヒットして、それはマカロニウエスタンという異質の西部劇を生むに至った。英米主体の映画史と競うように流行したものだった。
 私は、ヘップバーンと並んでクラウディア・カルディナーレという女優が大好きだった。私事ですみません!

 ロシアの侵攻当初は零下の日々が多かったが、これからは真夏の陽気へと変わりゆく。気温的には季節を巡るものの、ウクライナの風景はしばらくは季節を感じさせる事の無い暗い状況が続くのだろうか。ひまわりどころか、小麦をはじめとする穀物も、今の光景からはどれほど作れるものやら。返す返すもプーチン許すまじの思いが募る。

No.3558 子どもに見せられない光景

2022.04.07

 日に日にウクライナ各地の無残な光景が画面に示される。戦争犯罪かどうかを問うどころではない。これが戦争犯罪でなかったら侵略兵器のみならず暴行強姦の後に命を奪われたウクライナ国民は浮かばれない。
 移動式火葬車などという耳にしたことのないワードに気持ちが暗くなる。ロシアが証拠隠しのために繰り出した特殊車両だというが、そういったものが造られていることが信じられない。戦争を仕掛ける思考があるからこそ発想し得る創造物だ。死した市民の姿にはボカシを入れているものの、黒いビニールに包まれた遺体を運ぶ姿は、子どもに見せるのをためらう侵略戦争の醜悪さである。先月春休みで来ていた孫は「こういうの何度も見たくない!」と画面を換えたものだ。
 G7外相会議で更なる制裁が打ち出されるなど、西側の結束をバイデン大統領は訴えたようだが、最終的に、クリミアを含めてウクライナに正常な状態が戻り、プーチンにとってウクライナ侵攻が全面的に失敗だったとなるかどうかに関心が及ぶが、その前に戦争終結が望まれるところである。 
 ロシアはフェイク捏造の主張を高める情報戦も展開しており、嘘を嘘だと証明する難しさは「嘘も100回言えば本当になる」という、格言になって貰いたくないような実態を深めている。特に自国の国民向けに欠かせないのだろうが、こうした不謹慎さは中国と変わらない。それは共にアメリカに対する敵意むき出しで、アメリカのみをウクライナ侵攻の原因であり、最大の敵対国として浮彫にしたいかのようだ。ロシアへの制裁をバイデン大統領が舵取りをしていることも憎悪増幅につながっているのだろうか。

 ところで、林外相が「日本に有事が発生したときには、アメリカが対応してくれる」といったことを発言しているが、こんな発言を聞いたアメリカはどう思うだろうか! 他力本願の国防発言を聞いたアメリカは、政治家だけでなく国民全体が日本の甘さに憤怒するはずである。まさに、ふざけるな!の話である。自ら防衛力を高める姿勢を示さない国を助けてくれると思っているのだろうか。今回のウクライナを見ればわかる通り、第三次世界大戦を引き起こさないために武器は供与するが自らは手を出さないという理屈は現時点で明らかにされている。中国やロシアが、まして北と南から同時侵攻し、そこに北朝鮮が参戦してこようものなら・・・考えたくはないシナリオだが、絶対に無いとは言い切れない悪夢をついつい想像させる現実をウクライナで目の当たりにしている。日本を敵視している大国が日本海の向こうにあるという地勢状況はウクライナ以上に深刻な問題ではないか! 悪夢が現実になれば、子どもに見せられない光景どころではない!子どもが次々と犠牲になっていく可能性がたかいのだ。
 比較するのが適切かどうかは別にして、新年度国家予算は男女共同参画費に9兆円、防衛費は4兆5億円程度で約半分である。国を守るために防衛費を増やすべきという声は、既に6割に達している。岸田総理の制裁発言は威勢がよく聞こえるが、具体的に自国防衛にはほとんど言及していない。もどかしい限りだ。

No.3557 あさま山荘事件50年で想うこと

2022.04.06

 ロシアによるウクライナ侵攻は、各地で人の命を命と思わない残忍な暴行殺戮が行われていた。ブチャ市内の惨状は見るに忍び難い。マリウポリでは5,000人の市民が殺されたという。独立した隣国に無秩序にミサイルを打ち、街の歴史も文化も破壊し続けるロシアは、過去の歴史に見られる残虐行為を民間人に対して行っていたのだ。独裁者の猜疑心による領土拡張には常にこうした結果が伴う。

 今から50年前の1972年2月のこと。自分は卒業を控えた22歳になろうとしていた時だった。軽井沢山中のアジトで同士14人を総括という名目で殺害し、山中に埋めた連合赤軍事件が発生した。殺害方法は文字にするのをはばかれるほど残虐無比なものだった。男女関係を問われて処刑の対象になった者もいた。
 当時、警察隊との攻防を流すテレビ画面に釘付けになったことは今でも鮮明な記憶として残っている。警察隊に銃砲を打つ赤軍派に対して、彼らが根城にする山荘にクレーンでつるされた巨大な鉄球が何度もぶつけられる様子はこの世のものとは思えなかったし、22歳の身が受けた刺激としては最大級のものだった。
 連合赤軍とは、日本共産党の分派であった共産同赤軍派と日本共産党神奈川県委員会が合体した組織で、この記憶に残る事件を起こす数年前から革命活動費を捻出するため金融機関を襲うなどしていた。
 そもそも、1932年の秋以降、国際共産党コミンテルンによる武装闘争指示による結果として、日本共産党は査問と称するリンチを都内のアジトで実行していた。同年、小畑達夫中央委員が死に、その後も不破哲三元委員長など若い時にひどいリンチを受けていた。彼はそれを耐えしのび書記局長から委員長へとのし上がっていく。

 
 今のロシアに言えることは、革命という大義を標ぼうする共産主義の原点である独裁指導者がすべての権力を掌握し、それ以外は絶対服従というスタイルそのもので、これはレーニンによるロシア革命に端を発するものである。正に時代錯誤も甚だしい古い人権無視の手法と言える。
 数人の処刑に関わり20年の判決を受けた元連合赤軍の一人が、事件50年にあたって「赤軍派が起こした事件は大きな過ちであった」と述懐している。テレビを見ていた側からすれば、間違いどころの話ではない。狂気の沙汰としか感じられなかった。左派思想にのめり込んだ若者たちの最後のあがきでもあったのかもしれない。しかし、その運動は深く静かに潜行し枝野幸男前立憲民主党代表なども影響を受けているのだ。
 今の時代、大衆運動や革命といったリンチ虐殺は遠い昔の話だと思っていたが、実際には1960年代の中国文化大革命、1989年の天安門事件はもとより、カンボジアでポルポトが起こした大虐殺では200万人近い命が奪われている。この時のポルポトは同国共産党中央委員会書記長という肩書だった。
 別の観点では、第二次大戦終了後に突然侵攻したソ連によって60万人の日本人がシベリアでの抑留を余儀なくされ、6万人ほどが厳しい捕虜生活の中で亡くなっている。既にお亡くなりになっているが、香日向でもその体験者で懇意にさせていただいた方がいた。南京虫やシラミで寝るのにも不自由したとおっしゃていたものだ。サハリンに送還されたウクライナ人は今どうしているのだろうか。
 こうした過去の歴史を彷彿とさせるプーチンロシアの蛮行は、この先いつまで続くことになるのだろうか。

No.3555 ロシアの影で中国の狡猾な動向

2022.04.01

 ロシアのウクライナ侵攻は先が見えない様相となってきた。いずれにしても共産主義思想に基づく全体主義国家の独裁指導者が選択する道は、自ら停戦という事にはならないものと思われる。また、それが大方の予想でもある。
 ウクライナをナチ化と称し、聴衆に大嘘を吐くプーチンは、既に国家元首として世界に通用する人格には程遠いという評価しかない。ロシアの侵攻が終わりを迎えた段階で間違いなく戦争犯罪人として裁かれることになるだろう。と考えれば、なりふり構わないプーチンに益々変貌する可能性も高い。そういう意味では、帝政ロシアの復活を意図しているとも言われるプーチンだが、皇帝プーチンへの選択は彼自身の破滅への道にならないとも限らない。
 あくまでも強権政治の元、言論弾圧、思想報道統制、果ては自分の為の法改正といった習近平が歩む道を模倣することになるであろう。そうなる方向に自らが舵を切ってしまった感すらある。中国が民族弾圧による民族絶滅すら思考していると言われるが、そこはプーチンに通じることかどうかはっきりとしたことはわからない。ともかく、中国とは異なる複雑な欧州事情がありそうだ。

 さて、その中国だがソロモン諸島と軍事同盟を締結する可能性が高いとされる。ロシアに世界の目が注がれている間に狡猾な軍拡路線を実行しているのだ。この同盟は既に現実のものになっているともいう。その内容は、ソロモン諸島に軍事的脅威が及んだ場合、ソロモンは中国に軍隊派遣の要請が出来ることが中心になっているようだ。その為に諸島のどこぞに軍事拠点を建設するであろうことは容易に想像できる。はてさて、中国以外にどの国が平和を損ねる軍事侵攻をすると想定しているのだろうか。ミクロネシア連邦のトップは、このソロモンの意向を馬鹿げた考え方として思いとどまるようにとアドバイスしているそうだが、ソロモンが耳を貸さないという。
 オーストラリアの東北数百キロの太平洋上に位置するソロモン諸島を、繰り返しになるが、どこの国が軍事侵攻すると言うのだろうか。南米にも中国マネーが押し寄せる流れは、中国の太平洋進出計画が着実に歩を進め、太平洋そのものが米中分断の真っただ中に置かれることになるのだろうか。であれば、南シナ海で仕掛ける中国優位のシーレーン構想がまた一つ具体化することになると考えるべきかもしれない。
 どう考えても、ソロモン諸島は中国マネーに目がくらんだとしか考えられない。下司な考え方をすれば、こうした途上小国相手ではそのトップに対して直接マネーパワーが及んでいる可能性もあるのではないかと思えてならない。習近平は国内の汚職絶滅に力を入れているというが、外交的には有り得る中国的外交作法かもしれない。
 プーチンしかり、習近平といった大国を牽引する権力者に待っているのは、自国内で権威を誇っても、全世界から尊敬を集めることができなければいずれ瓦解する局面にぶつかるということかもしれない。
 反面、自由主義国家群に言えることは、資本主義に対する批判や異論が高まりつつあることだ。自由主義と資本主義の分かれ道が問われれば問われるほど、コミンテルンがゾンビのように復活することも・・・いや、そうは考えたくはないのだが。日本にはマスコミを中心にそうした思想煽動があることは間違いない。

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