北海道ではヒグマ、本州各地ではツキノワグマの出没被害が連日のように報道されています。今年はすでに命を奪われた方が数人出てしまいました。その後もいろいろな場所で姿を見せ、農作物を食い荒らすクマが後を絶ちません。クマが山を下りて人里に餌を求めるのには、いろいろな理由があるのでしょうが、それに対して人間の方が生活スタイルを変えるというのは、どこか矛盾を感じてなりません。
私は相当の動物好きと思っていますが、人命の危機は放置してはなりませんし、クマの場合は八チに刺されてとか、蛇毒に咬まれてという生物被害とは悲劇の形が違い過ぎます。米フロリダ州には万を超えるワニがいて、散歩中の人が引きずり込まれて姿形を無くすという事件が時折ニュースになりますが、おそらく引きずり込まれて1分程度で窒息死に至るでしょう。それに比べて哺乳類の四つ足から受ける殺人は、まさに見るも無残で、命を落とすまでの辛さは想像を絶します。北海道福島街の新聞配達員さん、羅臼山の登山家の若者といった犠牲者はさぞや恐怖と血の海の中で意識が徐々に薄れていったのではないかと思います。
クマを殺すな!と行政に電話してきて2時間余りも抗議する人が、クマのいない地域に住んでいる人と聞くと、なんと動物愛護も無責任なことかと嘆くしかありません。
昨年、私が出席した全国議長会ではクマ対策に向けた国の援助を求める意見が採択された経緯がありました。これも当然のことと思うわけです。なぜなら、こうした地域にある自治体の多くは財政的には窮乏状態にあるからです。狩猟者(旧マタギ)の方々も、学生アルバイト並みの手当で出動指示を受けることに不満があるのはわかる話です。悲惨な殉職という場面に常に直面しているのですから。
私たち一般人は、クマに遭遇しても何も出来るわけではなし。母グマが子グマを2頭連れてのし歩くという各地でのニュースからは確実にクマが増えているのはあきらかです。密度が濃くなれば餌場の取り合いから移動クマが多くなるのもしかりです。まして山のドングリなどの餌が不作だというのであればなおさらです。
次の犠牲者が出ないことを願うばかりですが、当該地域が観光地として疲弊しないことに加えて人口が流出しないことも大切な対策になるはずです。
記事一覧
No.3848 クマ出没の異常性
2025.08.22