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No.2712 厳しい福祉環境

2016.02.17

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 福祉の現場での犠牲者が後を絶たない。高齢者施設しかり保育施設しかりといった状況で、尊い命が人間愛を基本とする職種の手によって失われる悲劇が頻繁に発生している。

 問題の原点はいろいろあるが、こうした現実に直面した議論が国会で行われているかと言えば、議員の心は選挙目当ての論争ばかり。法規定の見直しや予算の面で、政治が解決できる部分が少なくないはずゆえ、早期に関連審議を進めるべきところなのに、前号で述べた通りなかなか今の国会は思うように進まない状況だ。

 川崎の事件は、23歳の若い介護士の逮捕に至ったが、生活不安や将来展望が描けない焦燥感に苛まれ、精神が病んでいたと推測できる。そして「むしゃくしゃしていた」という毎日の中で、入居者に手が及んでしまったとの報道も。

 こうした施設の過酷な労働環境とそれに見合わない報酬システムは従来より問われており、離職者が多発している現状だと関係者は言う。
 国は離職者ゼロを掲げたが、軽減税実施にあたり消費税見込みが予定を下回ることは確実だ。それは直接社会保障予算に影響することになる。たばこ税などでは追いつくはずもない。
 平均賃金については、一般企業平均の3分の2で、いくら国が重点政策に掲げても根本的問題解決にあたってその差がありすぎる。とどのつまりは、介護の質、保育の質に関わってくることになる。

 見方を少し変えて、被害者側にも何らかの問題があるかもしれないと感じていたところ、ちょうど、川崎事件の容疑者が「○○さんは手がかかる人だった」と、動機の一端を述べたという。なるほど・・・事件の根は深い。これについては後述したいと思っている。