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No.2893 二兎を追った小池都知事

2017.06.22

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 小池都知事が市場問題でようやく見解を表明した。都議選の関係もあって決められない知事というレッテルを自ら塗り替える必要があったのは間違いない。出した結論は豊洲移転、築地再利用という一方は納得、一方は驚きと言ってもよい内容だった。とくに築地再利用については予算など具体的な中身にまでは言及していない。何を血迷ったのかわからないが、市場問題で更なる多額な資金が必要となる選択をしたことになる。都民の大切な血税の無駄遣いを見直すとしてオリンピック会場問題を混迷させたことと矛盾する。この問題では未だに運営予算の東京都負担分を明らかにしない姿勢は隣県知事の怒りをかっている。また、市場問題の長期化は築地市場地下を貫通する予定だった2号線計画を不可能にしている。
 かつて、無駄な税金を使わないとして建設が始まっていた世界都市博中止を訴えて立候補した青島幸男は都民の喝采を浴びて知事に当選したが、その後、都議会が臨海副都心開発の見直しと世界都市博開催の決議を可決するも、公約だとして博覧会の中止を決定した。これによりブース建設が途中まで進んでいた建設業界では人員確保、資材購入が裏目となって倒産が相次ぐという社会問題に発展した。結果としてほぼ全野党となった議会との関係が構築されないまま青島氏は2期目の挑戦をせずに政治から身を引いた。代わって誕生したのが石原慎太郎氏というのも不思議な縁かもしれない。青島氏が個人の心情を貫いた結果、その後の知事としての功績にみるものがなかったのは、まさにそれこそが二元政治ということなのだろう。今から22年前のことである。

 今回、市場関係者には様々な意見があるものの生活問題に発展する寸前だったのはどこか類似している。言ってみれば、地下水問題はあったものの豊洲新市場の建設が終わっていてよかったのかもしれない。知事が代わって建設が途中中止などといったことになれば、てんやわんやの騒動になっていたことだろう。パフォーマンス&ポピュリズム政治で受けに受ける小池さんならやりかねなかったと感じる。
 それらを含めて、そもそも知事就任後の今まではいったいなんだったのか。小池劇場は結局都議選に焦点をしぼった計算された戦略だったと言われても仕方がない。ヘタに未来の総理などと煽り、安倍自民との対局を印象操作したメディアによってその気にさせられたわけではあるまいにと思うが、もとより野心家は拭えない小池氏ゆえ、政局の中心に躍り出たと勘違いしたのかもしれない。
 いずれにしても、今回の見解表明は揉ますだけ揉ました結果落ち着くところに落ち着いた。多方はそうなるだろうと予測していた豊洲移転に関係者の多くはひとまず安堵したようだ。ただし、二兎を追った結果一兎は得たものの、築地再利用は今後に問題を残したことは否定できない。はたして都議選の結果はどうなるのか。二兎を追って大きな一兎を負った状況にならなければよいが。それは都民にとって歓迎出来ることではないはずである。