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No.2832 日露首脳長門会談

2016.12.15

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 いよいよ2016年も押し迫ってきた中、大きな政治ショーが2つ待ち受けている。ショーという表現が適切かどうか思案したが、安倍政治のこれ以上ない見せ場であることは間違いない。
 日露首脳会談と真珠湾訪問。どちらも世界情勢が目まぐるしく変化した今年の締めくくりとして、また安倍総理の対米、対露の未来思考型外交の本丸と言ってもよいだろう。
 

 後者はまた後日にするとして、今日15日の安倍・プーチン長門会談は、日本人であれば誰でも期待の目で見守る北方領土変換という課題に尽きる。ロシア極東地区における経済協力という点も含めて、70年来結ばれていない平和条約への締結も視野に入れての首脳会談は、まもなく(現在午後3時)長門市大谷山荘でいわゆる通訳を介するだけの「さし」で行われる予定だ。 

 ロシアの北方領土に対する主張にはいささか我田引水の面があり、これらはマスコミが詳細に伝えてはいるが、報道各社によって歴史的経緯の解釈に違いもあり、もちろん結果予想も異なっている。しかし、終戦後の8月28日に日ソ不可侵条約を一方的に破棄してわずか1週間程度で侵略した結果であることは間違いない。奪れるものは奪ってしまえというあさましくもはしたない戦争論理が突き動かしたものと解釈するしかない。今の世に通用する話ではないが、それだけ70年という月日は重いとも言える。
 4島変換という大命題に対しては、訪日直前にミサイル配備をした島の現状をふまえると困難だという見方が多くを占めているが、歯舞・色丹の2島変換がはたして可能かどうか。期待度を鎮めるために、それも簡単なことではないというのが通説になりつつあるが、私は案外に他の課題の進展次第では有り得ないことではないと思っている。と言うのも、この会談で変換への目途がつかなければ、逆に永遠に北方領土はロシア圏に属することになるだろうと思えてならないからだ。それは、日露双方にとって良作ではないはずだ。
 だからこそ、それを確定してしまう会談結果にはならないのではないかと思うのであって、期待ではなくあくまでも私的推測である。

 今のロシア議会は国家院(下院)450名中プーチンの与党会派だけでも343名を擁する安定体制下にあり、プーチンの一存が働きやすい環境にある。最も、やりすぎれば再びメドベージェフ等が台頭してくることもないではないが、それは共産党体質が色濃く残る国家での下克上は有り得ることと考えればよいだけのことだ。
 そのためにもプーチンが2島変換をロシア国内に納得させるためのソフトランディングの体勢作りが必要にはなるだろう。岸田・ラブロフ会談でもラブロフの冷徹な対応が目立ったが、プーチン体制の重要閣僚としてあえて厳しさを外に見せているようにも見受けられた。はたして、プーチンが日本からどれほどの支援協力を取り付け、それを国内にアピールするに十分足りうるかどうかだ。

 あとは、クリミアの強制併合によって今も続く経済制裁への対応が、未来志向の日露関係を構築するステージ作りにどれほどの足かせになるかといったところ。日本だけが勝手に制裁を解けば他の同盟諸国からの厳しい批判が待ち受けることになる。まさにトランプが顔を真っ赤にして怒り狂うことも考えなくてはならないが、トランプカードが今だに確定してない部分もあって、まったくこの点において先は読みにくい。オバマ現大統領との友好にも傷がつくことになりかねないので、これについては要用注意が必要だ。

 ただ、期待が高まり過ぎた状況に少々歯止めをする必要があると見て、変換の可能性についてを世論は静かになっているが、私たち日本人は熱い思いをこの会談に向けている。
 安倍総理にはただただ、政治理念を曲げることなく、またバラマキと揶揄されることのない外交に徹してもらいたいと思う。