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No.2816 朝ドラは貴重な活力源

2016.10.24

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 世相が刻一刻と殺伐化し、生々しい事件がこれでもかこれでもかと衝撃的に押し寄せる昨今、朝ドラに小さな幸せを感じ、その日の第一歩を元気に踏み出すパワーをもらっている人がけっこういるのではないかと思う。私もその一人だ。

 現在、放映されている「べっぴんさん」の視聴率が20%を切り、芳しくないとのことである。このニュースを見て思うことがある。
 ここ数年の朝ドラは快活で元気いっぱいの主人公・・・「ごちそうさん」「あまちゃん」「梅ちゃん先生」「あさ」「とと姉ちゃん」などなど、この基本的なスタイルは、その時折に待ち受ける難題を乗り越えながらパワフルに生き抜く女性像が描かれる。主人公を支える中心にはアットホームで人情味豊かな人間世界がある。そうしたものが物語のベースとなって、私たちに心地よい期待感をもたせながら、逆に元気を与えてくれているといった感じである。

 時代背景に戦争があるのも多くに共通しており、「べっぴんさん」もそれが基本設定にあるのだが、今までのドラマと違ってこの戦後風景描写があまりにも具体的過ぎて暗過ぎる感が強い。戦争孤児の描写しかり傷痍軍人が弾くアコーディオンの音色しかりで戦争表現が際立ちすぎはしないかと思う。
 セットも音声もナレーションもそれが過ぎるので、見ている側も重い気持ちにさせられる。朝からそうしたドラマを見るのは好まないが、毎朝の習慣でもあるし、連続物だからと見はするが、どうもスッキリしない。

 ネットではNHKのシナリオやセット設営を問題視する声もあるようだが、そこまでは感じないものの、やはり朝ドラは明るい内容に限る。主人公にふりかかる難題も一定の期間で収束するのは朝ドラスタイルとしていいし、イジメ役の存在もドラマの薬味となって味付けに深みを増すこともある。

 ただ、すみれはあさと同じ裕福な家庭に育ったお嬢さん設定だが、あさと違って控え目で、一歩下がった大人しい性格なので、次なる言動への注目度が高まらず、どんな失敗をやらかすといったワクワクドキドキといったものも見る側に与えてくれない。全体にコミカル度が無いのも特徴的かと。

 ナレーションも菅野美穂さんは嫌いなわけではないが、病いで亡くなったお母さんが天国から見守るというシナリオが、か細過ぎて元気度が不足している。たとえば、朝ドラではよくあるパターンかもしれないが、おばあちゃん役の中村玉緒さんが、シャガレ声の関西弁でナレーションしたほうが、シチュエンーションに合っているように思えてならない。

 そうは言いつつ「べっぴんさん」も、徐々に戦後を強く生き抜く母親としての女性へ描写が移り変わるものと期待して応援しながら見ることとしようか。
 しばらくしたら、日本中の視聴者にパワーという栄養剤を与えるであろうと念じつつ。