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No.2702 甘利大臣辞任に想う

2016.01.28

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 政治と金・・・まさかと思う甘利氏の今回の件についてはまずもって残念でならない。世間の評価は、与党と野党よろしく見方は二分される感じだが、私は一国民として率直にそう感じている。

 今まさに、国益という観点においてTPPの仕上げ間近である。甘利氏は報道が伝えるようにタフネゴシエータとして各国の代表と熱い議論を交わしてきた人物である。また、厳しい世界情勢の中、3年前からのアベノミクスの実務リーダーとして日本経済の牽引役をはたしてきた功績は間違いなく評価出来るものだ。ここに来ての中国ショックと原油問題で日本に限らず世界経済そのものが停滞域に入ってしまった感があるが、新年度に向けて復興日本はもとより、活力ある日本をさらに取り戻すための重要な立場にある政治家だと確信していた。

 舌癌の症状は見た目の至る点に感じられたが、疑惑の説明と辞任を表明した会見においては、清く男らしい感じを与えてくれた。そうは言うものの、反自民、反政権の立場からは、それもすべて反論の対象なのだろうとは認識している。
 私はふと次のことを思い出した。不起訴になったものの、数億円の金銭授受で世間を揺るがした小沢一郎氏のことである。
 あの時「すべて秘書にまかせていたことであり、私はなんのやましいこともありません」の一点張りで、言葉少なく相手を小馬鹿にした説明に終始し、巧妙に秘書の責任問題にふれた姿とは比べ物にならない。
 数日前のBS深層ニュースにゲスト出演していた小沢氏に、甘利大臣の件を質問する場面があった。徹底追及することになると指摘する小沢氏を見ていて、ついつい「あんたが言えることか!」と低い声を発してしまった。
 それにしてもメディアにとって小沢一郎という政治屋はどれほど貴重な存在なのかとも感じる。そう言う私も、同じ民主党時代に反小沢の急先鋒だった前原氏と会談したという点に興味を惹かれて録画まで撮ってみたのだから、まさにメディアに乗せられていることになる。

 
 「これで終わりではない」「議員辞職も視野に入れなければならない」という野党代表の金太郎飴発言には国益思考から程遠い、政争論理しか感じられないのは残念なことだ。それも今の民主党などの実態では仕方のないことではある。  
 国会運営に支障が出るとメディアは予測するが、私が民主党の幹部議員であったならば、ここは国会運営にストップをかけることはせずに真摯に予算審議を進めるべきだと進言するだろう。政権運営でつまずいた民主党に対する支持有権者や反自民浮動層の見方は、国会をサポタージュする姿ではなく、しっかり政策論争をする民主党に期待しているはずだと思う。
 確かに、敵失と捉えて今後の国会運営の戦略を考えるにしても、自らを利する方針は、党の政治力と品格を高める絶好の機会と考えるべきではないだろうか。世界は一秒一刻絶え間なく変化しているということを肝に銘じて、この大事な時期を乗り越える思想を示すことが党勢回復につながるものと確信するのだが・・・。
 どこぞの党では相手企業の承認喚問まで言及しているが、国会は犯罪立証の府ではないし、そんなものは国益に真逆の政治スタイルでしかない。
 
 ともあれ、大臣としての立場や任務の重さを鑑みると、秘書の責任に終わらせてはいけないし、数号前にも書いたが、政治家の矜持というものを示してもらわなければならないと思っていた。その政治家の矜持をしっかり示した甘利氏の対応ではなかったか。