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No.2646 信頼損なうパフォーマンス

2015.09.09

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 大型台風18号の到来。今が旬の稲刈り作業が中途な状態で、晴れ間を期待している農家の皆様には、辛い日々が続いている。このままだと実った稲穂から新芽が出て、商品価値が無くなる可能性もあるようだが、18号が去るまでじっと我慢を強いられることになる。
 TPPもニュージーランドの譲らぬ主張なので頓挫したまま。米作や畜産の未来も明るさが見えてこない現状だ。農業頑張れ!

 さて、自民党総裁選が実行された結果、無投票ということになった。なんで野田聖子さんが?と感じる向きは少なくなかったと思う。私は、日本の代表として野田さんが世界の舞台に躍り出る姿を、どうしても思い浮かべることができないでいた。なぜなら、根本的にそれだけの政治的実績が見当たらないことと、信義に劣る人間性を感じるからである。

 後者の理由として思うところは、第一次安倍政権は郵政民営化劇場をもたらした小泉政権から禅譲される形で誕生した。ところが、この小泉民営化劇場に反対して自民党を離れたのは誰あろう野田さん自身である。その後、安倍政権は年金問題などで選挙で大敗し、総理辞任に至る。
 そして、第二次安倍政権誕生とともに、復党していた野田さんは党総務会長の大役を任される。エポックメイキングな政治改革場面で離党の経験を持つ議員が、その後の国政で力を発揮する場などなかなか与えられないのは、政治に限らず組織の掟といったところかと思う・・が、民主党政権時の艱難辛苦を乗り越え、ひたすら充電を続けてきた安倍さんが見事復活し、小泉さんに反旗を翻した野田さんを起用した。これには多方が驚いた。後に触れるが、この点において安倍総理は小泉さんからうとまれる一因を作ったのかもしれない。
 1993年7月初当選組の8期生同期で、女性活用を謳っている安倍さんだからこそ有り得た野田起用だったと思う。

 
 考えてみれば、野田さんは小泉内閣時の1998年7月に郵政大臣を拝命している。それから約15ヶ月その職にあるうち、全国特定郵便局長組織との関係が深くなり、郵政民営化に賛成しにくい立場になっていったことは理解できる。だからといってやっていいことだったかどうか・・・野田さんはこの民営化劇場に離党という形で反旗を翻し小泉さんの憤怒を誘引した。
 もうひとつ、野田さんは小泉政策を痛烈に批判している。当時掲げた少子化対策に対して「100点満点で10点」と公的発言。小泉さんにしてみれば「38歳で大臣に抜擢したのに何をほざくか!」といった怒りのほどがわかる。
 安倍さんと小泉さんの原発をめぐる関係悪化は、この経緯を当時官房長官として見届けていた安倍さんが、あえて野田さんを大臣に起用したことも理由のひとつにあったことは想像に固くない。どこかで安倍さんを懲らしめてやらなければ腹の虫が収まらないと。しかし、それを実行するには世論に支持される材料が必要となる。そこに大震災から派生した原発問題が浮上した。以来、以前の蜜月ぶりが信じられない小泉主導による原発反対言動となっていく。
 今回、安保法案が民営化とは異質の大型劇場化している。その国会審議の真っ最中にたまたま総裁任期の時期が来たわけだが、この場面でまたまた野田さんは総務会長に起用してくれた安倍さんに対抗心を燃やした・・・安倍、小泉、野田の三角関係はそうした位置づけにあるのだ。政治家が成り上がる通り道だとしても、野田さんが、いかに恩義を重んじない人間性であるかがわかる。

 今の国政の悪しき部分は、権力への執着が未だに捨てきれずにいる旧態然の自民党元老による国政攪乱言動が行われていることも一因にある。自民党結党に至る経緯から郵政民営化による党崩壊に至るまでの旧来の自民党政治では、派閥の親分を盛り立てるために、常に若頭格として先頭にたって内紛内戦に大きな役割を持っていた政治家が、今、その出身母体を揺るがしている。
 元自民党籍も含めれば、現実に国の方向性を狂わせたいがごとくの、大物と言われた元老や、居場所に窮して信念なき野性化(野党化)に変節した人物が多い。それらは、現職・元職上げればキリがない。
 野中、古賀、山崎、加藤、亀井、小沢、鳩山、菅、岡田、部分的には小泉、細川もそうした部類に入ることになる。これらに共通するのは安倍憎悪だ。

 そして、古賀氏などは元領袖の肩書きをちらつかせて、野田さんの推薦人確保に暗躍する。双方ともに何を考えているのかだ。活気ある自民党とか、開かれた議論をする自民党だとか理由は綺麗だが、綺麗ではなく綺麗事にしか聞こえない。野田さんが総裁選に出たいのなら、もっと国民に日本の未来を語ればよかった。真摯に自民党総裁になったらこうしたいという夢を具体的に語ることはできたはずである。総裁選に進む前でもそうした自己主張はできないわけではない。安倍総理に対抗する政策論を訴えることは出来たし、安倍憎しのマスコミはひょっとすると、中身論は別にして野田さんの訴えを快く取り上げたかもしれない。しかし、最後までそうした具体論は表に出ることなく、形だけの理由で出馬ありきの姿しか見えてこなかった。

 野田さん出馬にはいろいろな憶測がかまびすかしいが、考えるに、さほど難しいことではなく、野田さんは総裁選に出る資格を得ることで、党内存在感に重みをもたらしたかったのだろうと推測している。その際、ひとつだけ欠けていたことは、自らの過去を振り返らなかったことである。誰かにそそのかされたのかということよりも、野田さん自身に野心と焦りがあったことは否めない。
 自民党には、現在衆参合わせて42名の女性議員がいる。見渡しただけでも閣僚経験者は多いし、知名度、人気で野田さんの上と思われる人も数多い。
 衆議院で言えば、小池、稲田、高市、参議院では丸川、橋本、有村、森、片山、山谷、佐藤、三原といった古参、若手含めてなかなかの布陣となっている。野党とは比較にならない、さすが自民党と感じる切れ者が揃っている。
 野田総務会長と高市政調会長の女性の戦いがマスコミを賑わしたのも、それほど古いことではない。こうした状況に対して、脳裏をよぎる中身が野田さんの場合通常とは異なり、戦闘的な方向性に舵を切るのかもしれない。

 実は、前述の女性議員の多くは政治的に七光りを持たない人たちである。これに比して野田さんは、祖父が元建設省の野田卯一という政治的系譜を有し、あの明治維新の立役者の一人である大村益次郎の縁戚にあたるという。大村益次郎・・・そう、靖国神社参道に巨大な像が立つ、あの大村益次郎である。それにしては、高市さんは閣僚参拝にも堂々と出向くが、野田さんの参拝は聞いた覚えがない。
 ただ、そうした系譜は野田さんのプライドをくすぐると同時に、人一倍上昇志向を強くさせる原因になっているのかもしれない。

 本来であれば、野田さんは勝てぬ挑戦をすることなく、大抜擢してくれた安倍総理をしっかり支える立場を貫けばよかったと思うのだが、基本的に目立ちたがり屋で野心家ということと、先を読む力と良きアドバイザーがいないというのが、今回の総裁選騒動の結論か。
 ちなみに、野田さんが国会議員としてどういった活動方針を示しているか、そのいくつかを上げておくこととする。
■選択性夫婦別姓制度導入・・・賛成
■青少年健全育成基本法案・・・推進
■TPP参加・・・反対
■カジノ法案・・・推進(カジノ推進議員連盟初代会長)
■日韓議員連盟、日華議員懇談会会員
■パチンコチェーンストア協会政治分野アドバイザー
■自民党遊技業振興議員連盟会員
■時代に適した風営法を求める議員連盟会員
■骨髄バンク議員連盟会長