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No.3974 遺米

2026.09.14

 今年も市内の農家さん数軒から新米をいただいた。こうして、幸手産新米の美味しさに毎年のように感謝の膳をいただくようになって長い年月が経った。
 過日、届けていただいた方から感慨深い言葉を聞くことになった。
「親父が作った最後の米です」
 そういえば、夏に入りかけた頃、長らくお世話になった市東部の農村部の方が亡くなられたのだが、息子さんのその言葉で無念の思いが再びよみがえったものだ。こちらが出向くことがほとんどだったが、会えば、いろいろなアドバイスと励ましで私の背中を押してくれた人だった。その方の最後の米・・・しろかきから、田植えを終えて、苗の成長を毎日楽しみに田に出かけるものの、すでに病魔に侵された身体は、徐々に苗との出会いを少なくしていったのだろうと思う。農家の人にとって、可愛いコメの成長は何物にも代えがたいほど愛情を注いでいたことだろう。
 ただ、残念なことに、息子さんは米作をやめるとのことだった。これもまた止む無しか。学業終えて、会社人間になる第二世代が圧倒的に多くなったのも、米価の他に例を見ないほどの低落があり、親の苦労を目の当たりにしていた人間に農家の面白さは伝わらないし、教えることも難しくなっていった昭和後半から平成、令和への流れ。辛いご時世が長すぎた。
 今も、物価高で肉、魚、野菜を始め、多くの食材が値上げラッシュだ。ところが米価は、昨年の高騰から一転して半分以下に下がっている。農家さんにとって間尺に合わない物価事情だ。
 親父さんはきっと「お前はお前の好きな道を歩めばいいさ」と言ってますよ、と息子さんに。少しは気が軽くなっただろうか。