ネットニュースを見ていて、いかがなものかという表現に出くわしました。
「藤井名人 がっくし6年ぶり千日手」と言う日刊スポーツのタイトルです。将棋は打てるものの強くもなく、詳しくも無い全くの素人ですが、千日手と言うのは聞いたことがあります。とても珍しいことが新聞タイトルで分かりますが、主に後手が不利な状態を抜け出す策として用いるものだそうです。手として、作戦として認められているのですから、これを批判するのはいかがなものかといったコメントもネットには多く見受けます。
挑戦者の永瀬さんは藤井名人に勝つために努力する結果、こうした手につながったというのが、なんとなく理解できるところです。
掲題の指摘は、千日手のことではありませんで、日刊スポーツが表現した「がっくし」という言葉です。
1980年代後半のことですが、下北沢にビッグベンというSCがありました。駅から真っ直ぐ坂を下りた最初の四つ角にあり、当時は下北沢でも洒落たSCとして名を知られていました。余談ですが、この後に今は名の通った本多劇場が出来るなど、街がぐんぐん芝居の地として発展していったのです。このビッグベンの地下に「香多里亭」という小さなステージのあるカフェレストランがあり、そこでは落語やミニ演劇、歌謡イベントなどが行われていました。のちに大スターとなった3人グループのシュガーの原点もこの店にあったということです。
この店を経営していたオーナーが、山内雅人(やまのうちまさと)さんという声優さんで、ラジオで人気だった笛吹童子の霧の小次郎の声をされていた方でした。ご存命であれば97歳になられるはずです。実は、この山内さんは当時放送表現教育センターを主宰するなどして、昨今の日本語の乱れぶりを嘆かわしく感じていた方です。いろいろとご指導いただいた関係として個人的に親しくさせていただいたものですから、とくに記憶に残っている方です。
山内さんが、日本の大マスコミである新聞社が「がっくし」という言葉を使ったことについてどう感じるだろうかとついつ思い出してしまいました。がっくしという表現は一時若者に広まった言葉で、今は死語に近いものだそうです。やっぱりがやっぱとかやっぱしと変化していたことがありますが、それと同じようなものだと考えられます。
私も文章作りでは自分流の独特な表現が出来たらいいなあと考えることはありますが、俗っぽい表現はしたくないという意味で、山内さんの教えを忘れたことはありません。最近のマスコミは少しおかしくなりましたかね。
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No.3821 日本語を正しく!
2025.05.18