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No.3349 走攻守すべてにパワーの差 

2020.11.26

 昨夜の日本シリーズ第4戦で今年のプロ野球の幕が閉じた。この4試合を見て、セパ両リーグの差を嫌というほど見せつけられた。セリーグの各チーム120試合のペナントの戦いはいったい何だったのかとさえ感じた。セリーグ全体のイメージダウンにつながったように思えてならない。
 第4戦の1回表、1番起用の若林と2番坂本の連続2塁打であっさりと点をあげた時、おっこれはいけるかと思ったのも束の間、無死で2塁に残った坂本をクリーンアップで3塁にも進めることが出来ず、6番中島がファウルで粘ったものの地を這うボールを空振り三振。実はこの場面で、10球目のファウルを打たれたピッチャー和田が苦笑いを浮かべたシーンがあり、アナウンサーもこれを指摘していたが、私はこの時すでにいやな予感がしていた。そして、その裏柳田の逆転ホームランが出たに及び、ことしのプロ野球の終わりを感じた。もはやジャイアンツには、大相撲の貴景勝のような闘志と技術力の双方ともに底力は残っていないと結論づけざるを得なかった。第3戦でノーヒットピッチのムーアを7回でモイネロ、森と継投させた定番スタイルの工藤采配も余裕の産物ではなかったか。

 よく、セパの野球の違いというのが話題になるが、何のことはない、結局のところパワーの差という単純な理由に行き着くシリーズだった。ここ数年、BS放送の影響でパリーグも含め一夜に数球場の生中継を観ることが可能になっている。なんとなく、ジャイアンツの試合にチャンネルを合わせる習性があるが、それでも他の試合を覘きに行くと、その面白さにそのまま見続けることもちょくちょく。それが年々高まる傾向にある。たまたま話題の選手が出ているということもあったりで、関心度の高い選手は昔以上にパリーグに多いという事情もある。
 実は、江川と桑田のドラフト事件後をのぞき、長嶋ジャイアンツ一筋の私であっても、ここ数年のジャイアンツには強くなければいけない伝統の巨人軍というイメージはもはやない。いや、本来スポーツの世界にそうした自負や驕りは意味がないと感じている。ジャイアンツプライドって何だろうとも。ジャイアンツが強くなければプロ野球は面白くないと言われ続け、私もそうだと思っていたが、長い年月をかけてそういう固定概念が私自身に無くなりつつあることを実感させられた日本シリーズだった。
 工藤監督の采配を感じさせないほど選手すべてが、持てる才能を目いっぱい発揮したソフトバンク。甲斐、栗原、牧原といったプロでは小兵の部類に入る選手たちのパワフルスウィングはジャイアンツにはまったく見られなかった。裏の事情はあるのだろうが、バレンティン、内川、長谷川といった選手は登録もされず、昨年のシリーズで活躍した今宮なども出番はなかった。なのにということである。
 思えば、原監督はペナント戦線で大きなリードをしたせいか、選手をあれこれ使い過ぎてオーダーに定着した選手が少なかった。後半、吉川、松原の1.2番コンビが固まったかに見えたが、それが確実なものでは無かったことがシリーズで、しかも最終戦ではっきり示された。昨年来、選手起用法に複数のポジションを守れる選手育成法を原点にするスタイルを原監督が進め、それが現代野球であるかのように持ち上げる風潮があるが、ジャイアンツがやることだから話題性が高いだけであって、それは結果的には浮気性的起用法とも言え、結局のところ固定的にポジションを獲得する選手は出ていない。

 ソフトバンク1強時代と言ってもよい現状は、数年続く可能性もあり、モイネロのカーブ見たさ?にパリーグの試合にチャンネルを合わせる時間がますます多くなるやもしれない。いや冗談はさておき、シリーズの前段階で、ソフトバンクに立ち向かうパのチームの出現を観る楽しみが増えたというのが正直なところだ。ロッテの佐々木が160キロクラスで快投乱麻とでもなれば、野球好きの眼がパリーグに釘付けになるのは間違いない。それはファンの誰しもが期待するところではないかと思うが、それ以上にセリーグの奮起を期待して、本年の野球談議の最終稿とします。