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No.3341 トランプかバイデンか?

2020.11.06

 お国柄により選挙制度が異なるのはわかるが、世界が注目する大統領選挙が混迷を極めている。
 やんちゃな老ヤンキーが続投するのか、それとも認知症の不安が残るバイデンが3度目で夢を叶えるのか、3日に始まった開票のゆくえが2日過ぎても混沌としたままだ。心配なのは、アメリカ国内の2分化だ。リベラルというか左翼思想が広まりつつあるとされるアメリカで、ますます左派系がほくそ笑む国情に変貌していく可能性がある。
 アメリカンパワー、アメリカンドリーム、フリーダムといった観点から世界中から羨望の目を集め続けたアメリカ。わずか300年足らずの歴史しかなく、世界の人種が集まり、世界の経済を牽引している世界一の大国が、デモ、暴動が常態化する国家へと変貌する経過で、その力を削がれていくことは間違いない。
 憂うべきは、選挙の裁判が長引くことは間違いなく、この間にアメリカの世界のリーダー的立場が薄れていくことである。アメリカの力が弱まっていることは中国やロシアの対応を見れば一目瞭然であり、その他独裁政権、全体主義的国家が増えていることも民主主義国家群にとって芳しいことではない。
 少なくとも、北朝鮮の核開発は進むだろうし、中国の金銭外交はますます進展するであろう。日本を見るまでもなく、どの国もコロナで疲弊している状況であれば、中国の出方はアメリカ混迷の間隙をぬって進攻することだろう。現状、中国の武器は金だ。それで途上国を意のままにするのはコロナ禍ではますます有効である。また、オーストラリアに対して矢継ぎ早に仕向ける経済発動がとどまりを見せないのも、アメリカが盾になれない状況が続けばじわじわと効果を出すはずだ。牛肉、酪農品、石炭、綿花といった輸入制限にオーストラリアの企業がどれほど堪えることが出来るだろうか。驚くのは、中国の港についた約1憶5千万円分豪州産オマールエビが衛生上の観点からという理由で港で足どめをくい、検査待ちの状態にあると昨日の新聞は伝えている。生きたエビゆえ場合によっては廃棄ということも考えられるという。商契約に基づいてのコンテナ発送だと思うのだが、中国という国は指導部の一言による手のひら返しに躊躇のない国だという事がよくわかる話だ。前号で書いた国会審議において、このオマールエビの緊急肩代わり購入が出来るならば、もしくは生産の9割が中国向けというが、日本がその何割かを安定的に購入してはどうかという新たな交易を緊急提案質疑するくらいのことを野党が発言したならば拍手ものではないか。南シナ海における合同演習の話が進むオーストラリアに対してこうした友好の手を差し伸べることは決して無駄にはならないと確信する。
 話は戻って、日本の安全保障上のみならず諸々の点で、アメリカ大統領が誰になるかは関心を持つところだが、問題は世界の勢力図が一気に変わりかねない可能性を秘めていることである。独裁全体主義は予算をはじめ、すべての意思決定に時間がかからない。コロナで英仏までもが再ロックダウンする現状をふまえると中露の動きから気を許すことなく直視し続けることが必要だ。
 以上、諸々考えて米大統領はどちらでもいい、混迷の期間が長引き、アメリカ国内が騒然としたした状況が長続きすることだけは避けてもらいたい。
 話は変わるが、ジェームス・ボンドさんが亡くなった。何度見てもボンドはコネリーボンドに尽きると思って、今でもBSなどでのコネリーボンドを楽しみに見ているのだが、このイアン・フレミング原作のストーリーは常にロシアや北朝鮮、時には中国がボンドの前に立ちはだかる悪の強大国であり、核や金、ダイヤモンドに絡み世界制覇をもくろむ難敵のシナリオが多い。
 左翼思想及び独裁政権国家に対する嫌悪感が、この作者だけでなくイギリスの考えであるように感じるのだが、この難敵に立ち向かい滅ぼすストーリーの爽快さが長寿かつ大ヒットの所以ではないかと感じるのだ。
 ジェームズ・ボンドは架空の個人だし、ストーリーも現実離れしているが、連想させる敵は必ずしも架空とは感じないところがこの映画がヒットするポイントとはいえないだろうか。
 そういう意味において、アメリカという大国の存在が世界にとって重要な位置づけにあることは間違いないと思うが、昨今の民主主義は以前にも増して時間がかかるようになっていることは心配の種だ。