記事一覧

No.3299 川辺川ダムがあったら・・・

2020.07.06

 梅雨の雨かと思っていたのに・・・これほどまでに暴れまくる豪雨に変貌するとは。昨今の雨は人知をはるかに超える猛烈さで命も財産も一瞬のうちに奪う。毎年のように発生する大洪水は、地球環境そのものが変貌していることを実感させる。そうでなければ、世界各地で洪水被害が発生するたびに観測史上最高という形容詞が付帯することはあり得ない。
 日本の各地で地域風情を醸す要素となっている大河。その風土風情の代表格がこうも頻繁に暴れ川に変身することへの対策としてダム建設が国家事業として進められてきた。まさに、国土強靭化事業とはこうしたダム建設も大きな目的事業と考えられ、それほど甚大な被害を各地で広範囲に発生するという点においては地震に匹敵する。

ファイル 1213-1.jpg 語るに久しい感じだが、民主党政権によって行財政改革の名の元に行われた「仕分け」は、ダム建設を各地でストップさせることになった。関東にあっては八ッ場ダム。そして、九州では今回大きな被害をもたらした球磨川水系で計画されていた川辺川ダムである。この政権で行政刷新大臣であった蓮舫議員は、数日前にスーパーコンピューター富岳が世界一を奪還したことで「2位じゃダメなんですか!」という大臣当時の発言が話題となっている。
 しかし、この議員が顰蹙をかった最大の施策は、多摩川のスーパー堤防事業の中止を唱えたことではないだろうか。昨年の19号台風で二子玉川地区が堤防決壊被害に見舞われた際、民主党政権責任論として大きな話題となった。利根川や江戸川のスーパー堤防事業も予算縮小の憂き目にあい、事業はかなり遅延した。
 ダムに戻るが、八ッ場ダムは昨年の台風直前にほぼ完成し、利根川下流域に大きな救いの手を広げた。川辺川ダムは・・・現状40名を超える命が奪われたことに心が痛む。
 民主党政権同様にダム建設に反対してきた熊本県蒲島知事は、反対県民の意を汲む方針を貫くようで、今に至ってもダム無し治水を実現したいと発言しているが、その具体性には触れてはいない。住民に添う政治も大切ではあるが、それも時と場合によりけりで、住民が常に正しい方向性を示すとは限らない。詳細は不明だが、県民全体の意見ではなく、まずは流域住民の意見を反映させることが優先されるべきと思う。事業費の県負担金が小さくないのは理解するが、税金の公平な使途と災害発生の危険性は地域ごとに異なることとの整合性を図ることの難しさが防災対策が後手に回る所以かもしれない。政治とは一筋縄ではいかないとつくづく思う。
 亡くなられた方々に慎んで哀悼の意を表し、被災者の皆さまにこころよりお見舞いを申し上げます。