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No.3101 二元政治で政治の質を高めよ!

2019.03.27

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 前々号3099について小生なりの考え方を示したいと思います。
 他の自治体議会をダシにするようで申し訳ないのですが、上尾市の例は大変わかりやすい現代議会事情を言い表していると思います。議員個々の資質も政治レベルを低下させる要因になっている例が数多くありますが、議会の構図というか会派構成による最大会派の驕りが明らかにみられます。

 上尾市の畠山市長は、4年の県議時代に議席を同じくさせていただいた当時の民主党県議団の団長さんでした。思想信条は異なってはいたものの人間的には温厚で懐の広い方でした。その畠山氏が前市長と議長が結託した形の贈収賄事件で失脚した後、市長に就任されたわけですが、当然、民主系ということで最大会派である自民党系は野党ということになります。言ってみれば、上田知事と自民党県議団の関係と同じと考えることも出来ます。自民党県議団は上田知事が主力とする施策に対してすんなり了解するという関係にはありません。なんやかや注文を付けるという状況が繰り返されています。ただし、定例議会ごとに提出議案の説明はしっかり行われます。幸手市レベルとは異なり、かなり大掛かりな議案説明の日程が計画されます。そこで、その内容に疑義があれば、上程そのものにストップをかけることもあります。日程を遅らせることもあります。付帯決議を付けるという条件付き賛成もあります。しかし、予算などでは県民生活への影響を考慮し、何が何でも反対と言う対応はとらないのが通例と言えます。
 各種情報を見聞きして感じることは、もはや知事と自民党の関係は抜き差しならない状態にまで来ています。そのきっかけは、ある自民党県議が執拗に上田知事が特定の組織に便宜を図ったうんぬんを唱え、チラシまで作成して知事弾劾運動を続けました。議会中のある日の朝、いい加減にしろというわけで、当時の特別秘書が自民党室に乗り込み、大声で「このちらしを作ったのは誰だ!」とやったのです。小生は、たまたまその現場に居合わせましたが、それは確かに非礼な押しかけでした。その特別秘書は詫びを入れたうえに退任することになりました。上田知事の心情がどういう方向に走ったかがその後の県議選というわけです。結局、前回選挙で上田知事がとった行動が今につながっていると言えます。もとより、その前から最大会派としての権能を活かす議会活動を自民党県議団は標榜していました。それが、二元政治への回帰という目的だと1期生の小生は考えていましたが、前出の事件もあり、ギクシャクした関係が増幅して上田知事に感情的なものが芽生え、4年前の選挙戦で上田党「選択」を結成、自らに近い少数野党への同時支援も行い、自民党の過半数割れを画策したわけです。選挙の遺恨は後に残るのが常です。

 話が県のことになりましたが、上尾市の例は、最大会派から選ばれている議長が市長に「予算上程は事前調整をして議会の意向をふまえるべきだ」と注文を付けたことに対して、市長は「定例議会に直接上程するのは正式な手ずるで、議会において議論すればいいはずだ」と突っぱねた。その後の記事の内容は、議長側の思考に最大会派の驕りが感じられると言うのが小生の見解です。

 予算に対して強制的な増減要望を出すのは最大会派の姿です。首長は各部の新年度予算案をヒヤリングして、自らの考えを示しつつ政策的調整をして予算が決まります。そこには普通ですと最大会派イコール市長与党の関係で、最大会派議員の個々の要望が細かく要求されるのが議会の通例です。この普通ですという部分が実は問題なのです。いったん上程されると極端な変更は難しくなります。さりとて全面否決もしにくいのが予算です。
 おそらく、畠山市長は市長就任以来、議会のたびに執拗に要求を重ねる最大会派に我慢がならなくなったのでしょう。これまでの悪い糸を断ち切ると言って当選したのですから。

 「上尾には上尾のしきたりがある」という議長の発言も問題です。悪い慣習であればサヨナラすればいいのです。そこには、議会改革の精神がまったく感じられませんし、驕りがあるのはあきらかです。こういう二元は本来あるべき二元ではありません。
 この議長は、事前調整をせずに議案を出して修正されたら市の恥」とも発言したようですが、なあなあムードの前市長と議長の関係が汚職の原因になった街の恥を、はたしてこの議長は理解できているのだろうかと思わずにはいられません。以前の号で富山県高岡市の例をかきましたが、これは完全に議会のチェック漏れです。逆に議会要望が財政破綻に導いた可能性もあります。首長の思惑通りの議会が全国の9割以上というショッキングなデータもあります。議会が紛糾するのも考えものですが、予算については全ての議員がシビアにならないと、小さな街などあっという間に財政破綻が待っていると考えるべきです。
 以上、指摘をしてこの問題を〆たいと思いますが、最後にひとつ。
 県や市で、議会運営を有利に導くために、首長自らが特定の候補者を見出したり、応援したりするのは自治法で禁止にすべきではないかと感じています。
もっとも、県レベルでは上田知事も小池都知事もその目論見は頓挫したわけですが・・・。首長は苦労はつきものです。それをはねのけるには研鑽を積むしかないということでしょう。