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No.3132 埼玉県知事選の展望

2019.06.21

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 なんとなく梅雨を実感しない日が続いていますが、稲はすでに中干しに入った地域もあり、雨の恵みを必要としない状況も見られます。中干しは稲の成長期において、台風はもとより突然舞い上がる突風対策のために大切なことです。とはいえ、野菜農家や小さな面積に芝や庭木を楽しんでいる私どものような家庭にあっては、水やりの手間が省けるという意味で時折の降雨は有難いものです。

 さて、お問い合わせにもとづく知事選について少々。
 8月に行われる埼玉県知事選の流れにようやく収まりがついたようです。上田知事が勇退を表明し、共産党候補の動向はまだにしても、選挙戦の全体像が見える状況になりました。
 現職勇退!・・・小生の予測は見事に外れました。しかしながら、6月に入ってまもなく、上田知事がどうやら5選をあきらめたようだという情報は得ていました。事実は、あきらめざるを得なかったということのようで、大野元裕参議院議員が立候補表明をした時点で上田知事の立候補にくさびが打たれたという見方が大方です。言ってみれば、上田知事は結論を伸ばし過ぎたということなのかもしれません。
 自民党県議団との軋轢は、条例破りの4選出馬が原因とするのが一般的ですが、そうなる大元の原因が小生の目の前であったことは以前にも書きました。それは双方ともに醜態を見せた低レベルな二元政治の末路でもあったと思います。事の発端はもはや別にして、結局、当時の知事特別秘書が放逐されることになった事件は、以降肝心の二元政治が敵対視するだけの方向に進み、自民党県議団の議案に対する執拗な対応が続いていったのです。
 しかし、上田知事に大きな瑕疵もなく、県内経済界のみならず全国的にも評価の高い現状に、少なからず自信を感じていたのは知事の心の奥底にあったであろうことは、ここまで勇退表明が遅れた事実と一致します。

 そして、青島健太氏の登場となるわけですが、結論から言って、知事業務を立派にこなせる器だと感じています。数カ月前から同氏の名はあがっていましたが、前回のこともあって自民党県連は慎重に事を進めたようです。大野氏の立候補表明が一気に知事選の動向を加速させたことは間違いありません。
 青島氏とは面識もありませんが、野球という面でかなり若い時から知る方でした。春日部高校、慶応法学部、東芝、ヤクルトという経歴を持つ青島氏ですが、小生の印象はそのすべてで主将を務め、ストッキングをしっかり露出した原点のユニホームスタイルで、時に熱いプレーを魅せる野球人だった記憶が鮮明に残っています。一流プレーヤーにまではなりませんでしたが、清潔感にあふれた人物像は、引退後のスポーツキャスターへの転身後もそのイメージに変わりはありませんでした。とにかく爽やかさを感じる人物でした。
 政治素人という言葉がありますが、今の政治家に最も欠けている清潔感にあふれる印象は、頭脳明晰さも加わって知事に相応しいというのが小生の感想です。森田千葉県知事、黒岩神奈川県知事、古くは同姓の青島東京都知事など、政治家経験のない著名人が知事になった例は少なくありません。
 草加育ち、草加在住、春日部高校出身というのも意味が深く、地元三ツ林代議士の3年後輩でもあり、土屋知事以来の県東部地域から知事が誕生する可能性が代議士のおひざ元の選挙区民にとっては明るい材料と考えることも出来ます。つまり、期待度としては満点の候補者であると確信しますし、どの政党にも属した過去がないことも、ある意味大きな魅力です。
 730万人のリーダーを務めることの出来るのは誰か?
 おそらく、行田邦子さんには申し訳ないのですが、川口という大票田と上田知事及び国政野党の支援を受ける大野氏と青島氏の上位選になる公算が強いと推測しますが、奇しくも慶応大学法学部出身の先輩後輩の関係でもあるので、この知事選は久しぶりに燃える選挙戦になるかもしれません。前回のように20%台の投票率は避けたいものです。
 川口には自民党県連会長として元総務大臣の新藤義孝衆議院議員がおりますので、川口市では自民党と国民民主党で二分することになります。もともと、大野氏は祖父が川口市長だった流れから、川口氏の重鎮の後押しもあることでしょうから、選挙で街が割れることになりそうです。選挙とはかくも人心がうごめく辛く、厳しい、やっかいなものではあるのです。これは小生の数回に及ぶ経験則からの話と理解いただいてもよろしいかと思います。
 誹謗中傷、裏切り、寝返り、ネタミ、怨念が渦巻く政治の世界、更に国政においては金がつきまとう、言ってみれば嫌な世界で、ギリギリの段階で勇退表明をせざるを得なかった上田知事の心に去来するものは何だったのか?
 そして、彼はどこに向かおうとしているのか?
 いつの時代も政界にまつわる人の心はサスペンスです。